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時効にかかった債権の取立の手口

時効にかかった債権取立の手口の実例(改正貸金業法施行前のケース)
年金生活者の稲田とよさん(仮名・八一歳)には、結婚して多額の借金を負い行方不明の状態になっている長女の博子さん(仮名・六三歳)がいます。稲田さんは博子さんが行方不明のままで万一死亡したりしたときに無縁仏にされたのではかわいそうだとの親心から、博子さんの住民票を実家の稲田とよさんの住所に移しました。ところが、どこでどう突き止めたのか、S社から稲田とよさんの住所宛に、博子さん宛の封書が二か月あまりの間に三通ほど郵送されてくるようになりました。

手紙の内容は、博子さんが一五年ほど前に、Aファイナンスから二〇万円、Yクレジットから一五万円、S社から一〇万円、合計四五万円を借用したにもかかわらず、まったく支払いがなく今日に至っているので、これに一五年分の利息をつけて支払え、一括で支払うのであれば利息を負けてもよい、といった趣旨でした。そうした手紙ばかりでなく、電報まできたので、さすがにそのときは、事情を話して電報を受領するのを拒否しました。そうこうしているうちに、稲田さんの自宅にS社から何度も電話がかかってくるようになりました。

初めのうちは博子さんがいるかどうかといった確認の電話でしたが、次第に「博子さんを出せ」だの、「博子さんに支払うよう伝えろ」だのと要求するようになり、しまいには、「払う気があるのか」といったような脅迫的な言辞まで受けるようになりました。稲田さんは博子さんの親ではあっても、博子さんの借金について保証人になっているわけでもないのに、そんなことまで言われ、しかもそれが度重なったことから、心労でノイローゼ気味になってしまいました。その後、二週間ほど電話が途絶えたので、あきらめたのかと安心していたところ、手の込んだことに、運送屋を装って確認の電話が入ってきました。

「こちらはM運送ですが、稲田博子さんの荷物はそちらに届ければよろしいでしょうか」それと前後して、嫁ぎ先の埼玉県に新居を持つ稲田さんの次女の自宅宛にもS社からの封書が届いたのです。手紙の内容は、ほぼ稲田さんに送られてきた内容と同様のものでした。このような保証人にもなっていない親族への取立は、貸金業法二一条一項で禁止されています。なお、時効期間が過ぎていますので、債務者本人が時効であることを主張すれば、借金は消滅します。監督官庁(金融庁・各地の財務局か都道府県貸金業指導係)への苦情の申立や場合によっては損害賠償の請求といった対抗策も考える必要があります。